“夜明け”を意味する漢字に【曙】と【暁】があります。
どちらも日へんが付いていて、どちらも形声文字に分類されます。
形声文字についてはこちら
日本人なら一度は見聞きしたことがある漢字ですが、なぜ同じ“夜明け”を意味する漢字が二つあるのか、漢字の意味から探ってみました。
まずは【曙】です。
音符の“署(ショ)”は“赭”に通じ、“赤い”という意味を持っていて、日光が赤く輝き染める、あけぼの、という訳です。
一方の【暁】ですが、音符の“堯(ギョウ)”は“高い”という意味です。
日が高く昇る頃、あかつき、という意味を表しています。
“日が高く昇る頃”というところが、夜明けとは合わないように思えます。
漢字の成り立ちからその意味を見ていくと、こういった矛盾点に気が付くことができますね。
今度は国語辞典を使って、言葉の意味で比較してみましょう。
【曙】は夜明けの空が明るんできた時。夜がほのぼのと明け始める頃となっています。
一方の【暁】はと言うと、元々『明時(あかとき)』から転じた言葉で、夜を三つに分けた時の3番目の時間帯を表していたんです。
つまり、宵・夜中・暁、という時間の流れで、夜が明けようとする時のことを指していたんですね!
ということは、同じ“夜明け”でも、暁から曙に向かって時間が進んでいって、夜から朝に向かっていく、ということになりますね。
日へんの漢字は太陽に関するだけでなく、日の光による明暗や時間に関係する漢字でもありますね。
太古の昔から人間の生活にとって欠かせない太陽の存在は、漢字にも大きな影響を与えていたという訳です。